Tomohiro Tonegawa

「僕なりに蓄えてきた財産を、多くの人と共有できるようになったことは大きな喜びです。それは、社会に身を置く一人の人間として、そこに根を張れたことを幸せに感じます」

Photo: Hiroya Nakata

舎川 朋弘

Tomohiro Tonegawa

1972年、東京都生まれ。90年代から白馬で厳冬期の滑走ラインを切り拓いてきたパイオニア。バックカントリーツアーサービスでは国内草分けのカラースポーツクラブ代表。


Photo: Tomohiro Tonegawa

-お気に入りのパーマネントユニオン製品

Koval Jacket & BIB Pants

機能的でデザインも優れたアウターシェル。定期的なブラッシュアップが施され、多機能でいてよりスポーティーなカットが気に入っています。ゲレンデからバックカントリー、街中からリゾートのアフターまでお供してくれる大人の一着です。


「Buttondown Shirt」

とても風合い豊かなウールシャツ。ヘビーでいて、やさしい着心地です。この一着さえあれば、アウターシェルと同じく、街から車を走らせ山に向かい、そのまま滑る時間まで愛用できるシャツ。


「Down Crew Jacket」

どんなシーンでも活躍するデザイン性に優れたダウンジャケット。山へ向かう移動の際や、山から下りた後の時間まで演出してくれる。丸く開いた首元からは、中に着るウールシャツを紳士に見せてもくれます。外を歩いたり、ロッジでくつろいだりするときにセーターのように活躍してくれます。カットもとても良く、中間着としても機能します。

-ホームマウンテンのこと

僕のホームといえば白馬エリア。でもその白馬エリアは一つの山域にとどまらず、北は小谷村から南の大町まで。そしてそのはじからはじまで、僕の住む白馬から20分ほどで移動できる範囲です。北から南に点在する山域ゆえに、その一つ一つで表情が違い、ときにコンディションも変化します。

Photo: Tomohiro Tonegawa

それぞれにコンディションの違いに注意を払い、それぞれの山とコミットする。山域とコンディション変化をイメージするには長年の経験が必要ですが、その分、奥が深く、長い年月を過ごしても一瞬一瞬を感じ続けられるのだと思います。だからこそ、この白馬が好きでここにいるわけです。

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-白馬バックカントリースキーのパイオニアと呼ばれること

僕自身は特に何も感じていません。たまたま僕がそこにいただけなのだろうなと思っています。でも実際にそう親しみを持ってもらえることにはうれしく思っています。

Photo: Hiroya Nakata

ただ、僕もたくさんの人に影響を受けることで、独自のスキー感が養われたと思います。遊びが無限に見いだせるとすれば、それだけパイオニアも無限に現れる。それは過去から現在もそうであり、今後未来においても無限に続くパイオニアワークの連続なのだろうと思います。

Photo: Tomohiro Tonegawa

-1年間のライフサイクル

冬には雪のことに集中するあまり、ある種の世捨て人状態に陥ります。少し危ないけど、でもそこまでしないと、日々変化する雪や山の状況に対応できないのです。でもその分、雪のない時期にはとにかくいろんなことに目を向け、たくさんの刺激を受け、新しいアイディアを取り入れようと努めています。

シーズンを終えたばかりの時期は、その過ごしてきたシーズンを振り返る時間を持ちます。このシーズンはどんなシーズンだったのか。降雪の入り方、雪の付き方、自身の山への接し方。また、遠く昔のシーズンを思い起こすこともあります。

Photo: Tomohiro Tonegawa

これまで、自身のスキー人生はどんなだったのか。そこから生きることの豊かさを知り、常に新しいスキー感に向かいたいと思っています。決してノスタルジーに浸るのではなく、未来ある価値観に生きたい。だって僕らはこれから迎える未来の時間を生きるのです。

Photo: Hiroya Nakata

夏はあまりジャンルにもとらわれない、いろんな遊びを行います。夏でも山に向かいますが、海の豊かさを感じたり、また街でも時間を過ごします。そうすることで、またフレッシュな気持ちで雪山へ向かえます。そしてそれはもう素敵な時間を得ることにつながり、いい形で下山することができます。

Photo: Tomohiro Tonegawa

もしかしたら、オンとオフがあるからこそ、常に山から安全に下山できるのかとも思っています。自由と不自由、自然環境と社会環境、ストレスフリーとストレス、そんな行き来が生きていることへの実感なのかな、と。そしてそれが、人生における最も幸せなことになるのだろうなとも思っています。

Photo: Tomohiro Tonegawa


 


-この夏のベストメモリー

やはり家族との時間でしょうか。この夏は、なかなか遠出することが適いませんでしたが、それでも家族みなで過ごす時間には多くの発見がありました。なんでもない日常の尊さを知り、幸せは意外と近くにあるんだなー、なんてことをしみじみ思ったりしました。

Photo: Tomohiro Tonegawa


 


-家庭と滑りの両立

雪のある時期には、やはり家族と過ごす時間が取りにくくなります。それは、冬から春まで半年近くも続きます。なにせ仕事柄、雪と山の環境に集中力を要するからです。でもその分、夏に家族との時間を多くとるようにしています。

雪のない時期には、なかなか叶わない時間を過ごすことに努めています。パートナーとの時間であったり、子供の成長を見る時間でもあります。季節ごとの旅行や週末の買い物、日々当たり前のようになされる遊びの時間、食事の時間などです。冬に少し偏った志向を、家族と過ごす時間からニュートラル性を取り戻す。そんなバランスが僕のスキー人生の中には必要でした。

Photo: Tomohiro Tonegawa

-もっとも印象深いライディング

一つの区切りとなったライディングがあります。それはやはり僕にとっても、それまで誰も足を踏み入れたことのなかった白馬の不帰峰を滑った時のことです。それまで、その手前に広がるエリアを滑り込んでいました。もちろんその一つ一つにも、新しい発見や多くの高揚感がありましたが、その先に聳える不帰峰の滑降は特別なものでした。

Photo: Tomohiro Tonegawa

対面から斜面を見上げながら山を詰め、実際に滑る斜面に立ったときに、それまでトレーニングしてきた想像力を駆り立てます。対斜面から見たものを180度回転させ、それを上から見下げる形に立体的に想像します。その斜面に滑走ラインをイメージし、斜度、斜面の向き、雪質、岩や崖も頭に入れます。そして、いざ滑るとき、意外にもスムーズに入っていけたことを覚えています。

ただし、そのときは一種の身投げに近い感じもありました。この斜面を滑れるのなら、その先はもうどうなってもいいと思った。無事に下山しなければならない、という気持ちも薄かったようにも思います。それだけで僕の人生には大きな意味があったのです。

そうして、予定通りのラインで滑走を終え、ボトムに降りた時の至福感と達成感。自分が生きていることへの大きな実感と自由感。体中が解放された、血管が開くような高揚感。またその先の長い帰路を経て、山麓に降りたときの心の浮遊感は今でも忘れられません。一つの自分なりの価値観、使命感みたいなものがなされた喜びも大きなものでした。

昨シーズン、不帰峰滑降人生における中でも最悪のコンディションをクリアし、無事に降りてこれた喜びを分かち合った瞬間。Photo: Tomohiro Tonegawa

-ライディング以外で熱中していること

スキーづくりです。様々な滑走環境を思い描いたデザインを起こすことが、ライディングと同じく、その自然との一体化したような感覚を覚えます。そこに雪が降っていなくても、積もっていなくても、夏でさえもイメージできます。

Photo: Tomohiro Tonegawa

板のシェイプひとつで雪とのコンタクト感が変わり、幅やプロポーション、形状ひとつとってもアイディアは無限。ロッカーの上がり具合やキャンバーのつけ方次第でも雪面から受ける感触が変わります。

これまでに創り上げてきた板をベースに、板の剛性と厚さにも気を配り、そして全体的なバランスとねじれを調整して完成です。あとは実際に板に乗って、幾度とないテストからそのフットポイントと様々な微調整を入れるのです。

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Photo: Tomohiro Tonegawa


-ガイドクラブを立ち上げて良かったこと

僕なりに蓄えてきた財産を、多くの人と共有できるようになったことは大きな喜びです。それは、社会に身を置く一人の人間として、そこに根を張れたことを幸せに感じます。

Photo: Tomohiro Tonegawa

人生における同じ志向を持つ多くの皆様との出会いがあり、たくさんの笑顔を共有し続けられることは、僕にとっての褒美です。

Photo: Hiroya Nakata

-10年後のあなたは

おそらく、今の生活スタイルを保って楽しんでいることと思います。でも、少しだけ新しい環境を取り入れ歩んでいることでしょう。この山とスキーの世界観は僕にとっての原子であり、それと社会の融合接点を求め続けているのだろうと思います。

Photo: Hiroya Nakata


-Text by

舎川 朋弘 / Tomohiro Tonegawa
@tomohirotonegawa


COLOR SPORT CLUB
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-Photo by

中田 寛也 / Hiroya Nakata
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