Yu Sasaki

「恐怖とプレッシャーは自分との対峙。自分の怖さ、弱さを受け入れた上でチャレンジする。滑り終えた後の達成感までビジュアライズ化しているので、あとはその動きに身体を合わせるのみです」

Photo: Emrik Jansson

佐々木 悠

Yu Sasaki

1986年、札幌市生まれ。高校卒業後、単身カナダ・ウィスラーに渡り、ビッグマウンテンフリーライドスキーに開眼。撮影や大会出場を中心に活動を続ける。2017年JFO優勝、2018年FWQ Hakuba優勝、2019年FWT Hakuba4位、FWTワールドツアーに出場。YouTubeチャンネルの「Freeride Adventure」も開設している。

-お気に入りのポック製品

「Obex WF SPIN」

軽量で、長時間被っていても疲れることがなく、ジェル状のライナーが衝撃からしっかり頭を保護してくれるので、このヘルメットなしに滑ることは考えられません。


「Orb Clarity」

視野を幅広く確保できることと、ゴーグルバンドと一体型のレンズは交換も容易で素早くセット出来るところが気に入っています。


「Joint VPD 2.0 Knee」

マウンテンバイクでは転んだ時に、必ずと言ってよいほど膝をぶつけます。衝撃と同時に硬くなるVPD素材は、走っている時は快適なフィット感で、転んだ時はしっかり膝を守ってくれます。長年愛用しているギアの一つです。

Photo: Keiji Tajima

-ライディング以外で熱中していること

マウンテンバイクとフードトラック。MTBは僕の夏の主軸となるアクティビティで、スキーに繋がるトレーニング要素も多く含みます。登りで心肺機能、下りではバランス感覚とバイクを操る筋力に動体視力も鍛えられます。スキーのツリーランととても良く似ている感覚と爽快感はやめられません。去年からスキー場にバイクパークも出来てさらにコースのバラエティも広がり、その日の気分やコンディションに合わせてコースを選べるのも魅力です。

フードトラックは夏の稼業。スキータウンなので、僕の冬の活躍が夏の売上に直結して嬉しい限りです。お客さんに満足していただくためにも、スキーを滑っている時と同じ集中力を使っています。

Photo: Yu Sasaki

-1年間のライフサイクル

僕の冬は12月に始まりレベルストークでシーズンイン。1月からフリーライドワールドツアー(FWT)に参戦するので、シーズン中は日本、カナダ、ヨーロッパを周り、あっという間に3月下旬。4月はカナダで滑り、5月からはフードトラックとトレーニングの日々に追われます。

特に7、8月は忙しすぎて毎日の記憶がありませんが、トレーニングを積んで身体の成長を感じられるのが日々の小さな幸せです。9月から仕事も落ち着き始め、10月はファミリータイム。日本に戻ってスポンサー回りやイベントに参加しながら日本を満喫。11月にはカナダに戻り冬に備えます。

Photo: Yu Sasaki

-この夏のベストメモリー

ヘリスキーならぬヘリバイクへ行ったこと。街から標高2600mまで、MTBを積んでひとっ飛び。カナダにいてもなかなか味わえない経験でした。天候にも恵まれ絶好のバイク日和でした。

その2時間30分のノンストップダウンヒルは、手足を痺れさせるのに十分な走りごたえ。身体がバラバラになりそうな振動と衝撃に耐えながら無事に完走。話には聞いていたけどこんなにワイルドなトレイルだったとは。レベルストークに来たらぜひ経験してもらいたいアクティビティの一つです。

Photo: Oscar Báscones

-ホームマウンテンのこと

僕のホームマウンテンはカナダのレベルストーク。北米一の標高差を誇る急斜面が続く山は、まさにフリーライドパラダイス。リフト3本のみですが、滑れる範囲は広大で、ゲレンデとは思えないような斜面を滑ることができます。ローカルのレベルも高く、ハイレベルなライディングを間近で見られるのも魅力的。

Revelstoke Mountain Resortはゲレンデ内でも自然地形が豊か。滑り手のイマジネーションが掻き立てられる。 Photo: Keiji Tajima

-もっとも印象深いライディング

2017年のヘインズでの1本。長い急斜面が続き、最後は特大のクリフが待ち受けるミスの許されない斜面でした。北西向きの斜面は日が当たるのが夕暮れ間近の数時間で、斜面のボトムについた時は日が傾きかけた頃。他のライダー達がラインを決めていく中、自分が思い描いたラインはリスクが高すぎて躊躇していました。

Photo: Keiji Tajima

スラフは確実に自分の方向に流れてくるし、20m落下したあとに着地できる幅はほんのわずか。滑るラインとスピード、飛ぶ距離と方向も寸分の狂いも許されない。一瞬無理かな……とも思ったけどここで挑まなかったら一生後悔すると思い、もし何かあっても仲間が助けてくれると信じてトライする事に決めました。

Photo: Keiji Tajima

ナイフリッジの上に立ってコールを待っている時間は膝が震えていたし、心臓の高鳴りも今までで一番だったと思います。滑り始めてからは全て自分のイメージ通りに滑り切ることができて、心の底から叫んだのを覚えています。下で撮り続けてくれたケイジ君とビッグハグで幕を閉じました。信頼できる仲間と自分との闘い。いつもスキーは僕自身をプッシュして成長させてくれます。

Photo: keiji Tajima

Photo: Keiji Tajima

-恐怖やプレッシャーの克服

恐怖とプレッシャーは自分との対峙。自分の怖さ、弱さを受け入れた上でチャレンジする。今までの経験値とすり合わせて限界値を見極めます。滑る前に細部までイメージが固まっているし、滑り終えた後の達成感までビジュアライズ化しているので、あとはその動きに身体を合わせるのみです。

2015年、アラスカ州ヘインズにある氷河地帯でのクリフドロップ。Photo: Keiji Tajima

-映像を残す意味とは

僕みたいな者でもスキーを通じ、今では世界を舞台に戦って作品を残しています。スキーは自分の姿そのもの。スノー業界に携わっていない人が見ても、夢や目標を持って達成する喜びや感動を伝えることが、映像を残す意義と感じています。

2016年のアラスカシューティング。バルディーズにある横長の特徴的なクリフは通称”School Bus”。Photo: Keiji Tajima

-コンペティションに出場する意味

僕にとってコンテストは今の自分に必要なこと。本来なら僕はコンペ向きの性格ではないし、今もツアー中は楽しさよりしんどいことの方が多いです。

それでも今コンテストに取り組んでいる理由は2つあって、一つはフリーライドを日本の雪山カルチャーに根付かせるためです。これから世界で戦える若いライダーを日本から輩出させたいし、雪山で遊ぶ楽しさを発信したい。個人で頑張っても手が届くところにあるので、門戸はまだ広いと思います。まずは僕らが先陣を切って新しい道を作っていきたいです。

フェイスチェックは入念に行う。アンドラ公国でのFWT2020、第3戦。 Photo: Keiji Tajima


大会斜面を遠く離れた対岸から眺め、滑走ラインを決めるための情報を集める。Photo: Keiji Tajima

もう一つの理由は自分のため。キャリアも何もない人間が発信しても全く響かないし、届かない。FWTで結果を残すことが、これからの活動(冬も夏も含め)に光を差し込んでくれると信じています。映像や写真は分かる人には分かるけど、大会での結果は誰がみても納得する。僕にしかできない滑りで結果を残して見ている人のココロをつかみたいです。

FWT2020、第4戦はオーストリアのフィーバーブルン。滑走後にモニターのリプレイを確認し得点を待つ。Photo: Keiji Tajima

-家庭と滑りの両立

シーズン中はほとんど家族と過ごすことができないので、シーズン終わりから秋にかけてはなるべく家にいるようにしています。特に5月と10月は僕にとってオフの月。毎日一緒に居れなかったぶん家族旅行や子供と遊ぶ日を多く作っています。

Photo: Yu Sasaki

-10年後のあなたは

大きな怪我もなく過ごしていれば、まだクリフも飛んでいるし、バックフリップもしています。「あのおじさん攻めすぎでしょ」って若い子たちに言われる姿を目指します!

Photo: Keiji Tajima


-Text by

佐々木 悠 / Yu Sasaki
@yusasaki223


Youtube <Freeride Adventure>
https://www.youtube.com/c/FreerideAdventureYuSasaki




-Photo by

田島 継二 / Keiji Tajima
@heart_films
http://heartfilms.com


Emrik Jansson
@ emrikjanssonphotography
https://www.emrikjansson.com


Oscar Báscones
instagram @oscarbmas